何年前からだろうか。

貴女を見つけてから、数え切れない年月が流れていた。


貴女は今


どこにいますか?





幸せですか?




紫蝶
    
一羽の蝶


 俺も蝶の様に飛べたらよかったのに







「はい!これで終了でーす!!」

「「ありがとうございました!!!」」


俺と颯は同時にお礼を言い、頭を下げると、部屋から出た。

廊下を二人で歩いていると、隣に居る颯が言った。


「なぁ…今日のカメラさん…可愛かったよなー……」

「お前おきなり何言ってんだよ」


あきれた顔でそういうと、彼は真面目な顔をして


「別にいいだろ?俺だって男なんだし。」

「…………颯ってそういうキャラだったか?」



俺は駿河 修(するがしゅう)。
そして隣に居るこの男は、城咲 颯(しろさきはやて)。

二人でshowというバンドを組んで、歌手として活動している。


「ってかこんな話してる場合じゃないって!次コンサートじゃん!」

「あっ。」

「ほらっ!早くしろって!!」


俺は颯の手を引っ張りながら、急いで移動用の車の元へ走った。


これでも俺達は結構そこそこ売れている歌手で、高校一年生(俺)と高校三年生(颯)という、まだ若い年代ということもあり、女性からの人気はもちろんのこと、男性までもが俺達のことを応援してくれている。


…つまり、世間じゃかなりの有名人。


俺が普通に街で歩いていたりすると、必ず声をかけられたりするもんだから、俺が出かけるといえば、学校か仕事、そして買い物以外ではめったにない。

だから友達と遊ぶとなると、本当に大変。友達に迷惑かけることになってしまうから。



「じゃー……今日はテンション上げて行くぞ!」

「はい。」

「……お前さ、やる気出せよ。せっかくお客さん来てくれてんだから」

「わかってるよ。」

「…行くぞ。」



ステージの上にあるライトが一つ一つ灯されていく。

そして流れ出す音楽。


俺はゆっくりとステージへ向かった。


高まる鼓動を抑えながら、ゆっくりと…。

客席を見ると、皆が笑顔でこちらを見てくれていた。

嬉しくなって、俺の表情も自然と笑顔になる。


それから暫くたって、颯がギターを弾きながら俺の隣に立った。
俺は手にギュッと力を入れた。



―――俺達にとって、初めてのコンサート。



辺りがシンとなるのを待って、俺は思いっきり声を張り上げて言った。


「今日はみんな一緒に楽しもーぜー!!!!」


そう言うと、客席から歓声があがった。

そして、颯のギターを合図に俺はスタンドマイクを待ち、歌いだした。




…とても気持ちがよかった。


すごく、すごく。


歌いながら客席にいるみんなの表情を見ると、俺の声を聴いてくれているのがわかった。


いや、感じてくれていた。


だから俺も、それに答えられるように気持ちを込めて歌った。



―――俺は ずっと独り

     でも今 独りじゃない こいつもいるし あいつもいる


     みんないる

     だから聴いて下さい

     気持ち込めて 全部届けるから

     全部 その身体で


     受け止めて下さい




このコトバは、最後に歌った曲の歌詞。

俺がまだデビューする前に作った詞。

作曲は颯がしてくれた。


一番思い入れのある曲だったのもあり、歌いながら泣きそうになったが、必死で堪え、最後まで歌った。



たった一時間のだけのライブ。


俺には貴重な一時間になった。



……みんな(お客さん)にとっては、どうだったかな。



******************





「本当、楽しかったよなー!!」


ライブが終わり、少しの休憩の後、俺たちは衣装を着替えるために楽屋へ向かっていた。


「…………。」

「颯…?」


本格的なワンマンライブは初めてだったけど、路上ライブやライブハウスでのライブ後は必ずテンションが高いはずの颯が、今日はなぜかずっと目線を下に向けたままだった。

話しかけても、何も答えないなんて、今までに一度もなかった。


「おーい颯?」


彼の目の前で俺は手を振ってみる。
すると、颯は慌てて顔をあげた。


「あっ…ごめん……ちょっと俺、行ってくるわ。」

「へ?!ちょっおい!!」


颯は急に走り出し、そのままどこかへ行ってしまった。

まだ着替えもすましていないというのに。

俺は急いで颯の後を追う。


―――嫌な予感がしてならなかった



何かある。直感的に、いや、確信があった。


すぐに後を追ったつもりだったが、しばらく走っているうちに颯の姿が見えなくなってしまったので、俺はいろんな場所をとにかく探しまくった。

会場内はもちろん、その会場周辺まで。


「………はぁ…。」


けれど、颯の姿はなかった。

…まぁ、どうせあのまんま(衣装)じゃ帰られないだろうし。
心配しなくてもすぐ戻ってくるだろう。


そう思い、靴を履き替え、楽屋に戻ろうとしたときだった。



「…………うっ…っ……」


誰かが、泣いている声がした。

その声は悲しそうというよりも、凄く寂しげで。

俺は気が付くと、無意識に後ろへ振り返り、泣き声がする方へと足を進めていた。


だんだん人気のない場所になっていく。

そのまま気にせず歩いていくと、ちょうど会場の真裏辺りの場所に、女性がひとりうずくまっているのが見えた。


「…っ……はぁ…」


すぐに先ほど聞いた声の主だとわかった。

俺はしばらく影に隠れ、その女性を観察してみることにした。




…髪はサラサラそうな、長くて綺麗な黒色で。

顔は見えなかったが、綺麗な人だなと思った。


「だっ…大…丈夫ですか?」


泣きやむ気配を見せない彼女に、俺は心配になって声をかけた。

彼女は俺の存在に気づくと、物凄く驚いた様子で俺の方に振り返り、小さな声で言った。


「…や……」

「え?」

「あっごめんなさい!」


今、何て?

と言う前に謝られてしまったので、何も言えなかった。



―――正直驚いた。

綺麗な人だとは思っていたが、ただ綺麗ではすますことが出来ないくらい美人という言葉が似合う女性で。

それくらい、美しい女性で。


「いや…別にそんな……」


俺は緊張してしまい、そんな言葉しか言えなかった。

それにも関わらず、彼女は涙を浮かべながら優しく微笑み、俺にありがとうございました。というと、静かに立ち上がって、その場から去って行ってしまった。


その姿はとても綺麗で、俺は思わずその女性を追いかけていた。



けれど、途中で足を止めた。





一人の男の姿が見えたから。

その男は会場の裏庭のような場所で、ボーっと空を眺めている。


あの男は……颯だ。

ずっと探していた。
けれど、声をかけることは出来なかった。





一度も見たことがなかった、彼の涙がそこにあったから。











+ちょこっとあとがき+

こんにちは!湊玲香です!!!
日記はあいかわらずのろすぎの亀更新ですが…(汗)
小説はかいています♪
っt、いうことで!やっと〔紫蝶〕連載開始です!!
渡の小説もお楽しみに…

では、これからも
party nightをよろしくお願いします♪