「恋奈(れな)おはよ〜!昨日はごめんな!急にゼミ行くことになって!」
「いいのいいの!別に気にしなくても大丈夫だから!」
そう言うと、彼はすまなさそうな表情からほっとした笑みを浮かべて、
あたしの頭をなでなでする。
「……もう…恥ずかしいじゃんかぁ〜」
「恋奈が照れてる〜!」
「うっうるさい!!!」
「ははははっ!じゃあクラス戻るわ!またな〜!」
「うん!」
付き合って今日でちょうど3年目。
和弥は覚えてるかな?
3年前の、あの日のこと。
でも、覚えてくれていたから…
だから、涙を拭いてくれたんだよね?
元カレ
「あんたら付き合って長いねぇ〜ケンカとかしないの?」
同じクラスの沙恵(さえ)がニヤニヤしながら話しかけてくる。
「そういえばケンカしたことないね〜。和弥優しいし………」
そう普通に答えると、沙恵にのろけかよ!!!と言われて、頭を思いっきりどつかれた。
私は笑いながら痛みをこらえる。
………でも、本当、和弥って優しいんだよね。
たまに昨日みたいに約束をドタキャンすることもあったりするけど、ゼミだとか模試だとか…全部勉強関係だし。
やっぱりさ、なんだかんだ言っても勉強が一番大事でしょ?
一応私らだって、もう高2だし。あとちょっとで受験生だからね。
私は専門学校に行くことになっているから、和弥みたいに4年制の難関校受けるわけじゃない。
ということもあって、勉強をする気なんてさらっさらない。
だから私との約束なんてかまわないでいい。
そのせいで和弥の負担になって、受験に失敗なんてなったら嫌だから…
それにお互い友達との付き合いも大切だし。
あと、二人ともあまりお互いを干渉することがなかった。
だからかな?こんなにも長く続くのは。
……これからも続けばいいのにね。
「じゃ〜携帯しまって!SHR(ショートホームルーム)するからね〜!!」
担任が元気よくみんなに呼びかけ、朝のあいさつをする。
もちろん私は携帯を閉じるなんてことはせずに、携帯をいじり続けていた。
ふと目に止まったカレンダー。
もうすぐクリスマスイヴだ。
…今年も和弥と過ごせるかな?
なんて思いながら去年のイヴを思い出す。自然と笑顔になる私。
でも今年は無理かなー来年受験だしなぁ〜………
まぁたまには女同士で過ごすってのもありかも?!!!
そう思いながら彼にイヴの予定を聞こうとメールの作成画面を開いた瞬間。
―――新着メールが届きました。
と、画面に表示された。
おっ!和弥ならちょうどいいや!
けれど、届いたメールは和弥からではなかった。
「………は?」
急に声を出した私に驚いて、前に座っていた沙恵が後ろの席の私の方へ体を向ける。
「えっどうしたの?」
「………メール…」
「誰?」
「元カレから……」
「えぇ?!!あんた!和弥くんの前に彼氏いたことあったの?!」
「うん……」
元カレとは、ちょうど3年前に別れた。
でもこの二年間、元カレのことを思い出すこともなかった。
和弥が、いつも、毎年、そばにいてくれたから。
あのときだってそう。
彼は、いつも私の傍にいてくれた。
**********
突然だった。
「別れよう」
元カレに言われた。
これといったきっかけもなく、突然告げられた別れだった。
「な…んで…?」
「別れてぇから!じゃあな…」
そう言って彼はただ呆然と立ちつくす私を残して去って行く。
『悲しみ』より、『驚き』のほうが大きすぎて
涙すら出なかった。
別れを告げられた場所が、彼とずっと過ごしてきた教室だったからかもしれない。
「私…何かしたかなぁ…」
夕日がちょうど沈みかける頃で、オレンジ色の光が私を照らす。
普通こういう景色なら、
『フる』んじゃなくて、『告る』ほうでしょ?
なんて苦笑を漏らしながら近くにあった適当に選んだ席に座って、机にうつぶせ、声を殺して泣いた。
彼は初めての彼だったのもあって、すごく好きだった人だから。
だからその分泣いた。泣き続けた。
涙の分だけ、本当に彼のことが好きだった。
何時間泣いたのだろう。
まだ顔をあげていないからわからないけれど、
夕日が差し込んで私を照らしていたオレンジ色の光も、いつの間にか照らすことをあきらめてしまったかのようだった。
「………」
帰ろう
そう思い、顔をあげた。
「何で泣いてるの?」
「………へっ……へ…?」
突然の事で、目の前で起こっている光景が理解できなかった。
とりあえず涙を止めることに集中しようと思ったけど、涙はただただ流れ続けるばかりで。
目の前の彼はそんな私をただただ見つめ続ける。
しばらく時間が経ったあとに、彼が口を再び開けた。
「『何で泣いてるの』って質問はおかしいかな…理由わかってるからね。ごめんね。」
「なっ何が言いたいの…」
「…俺ね、見ちゃったんだ。立花さんと、彼氏の矢田君が話している所を」
「…………」
彼は、黙っている私を見つめ、優しい笑みを浮かべた。
「お〜い恋奈?」
「えっあっごめん。何?」
「何じゃないわよ〜!どうすんの?!元カレからのメール!」
「う〜〜ん………」
ダメだ…思い出に浸っている場合じゃなかった。
「…じゃあ、私は帰るから!」
「えっあっ待ってよ!!私も帰るから!!」
「え〜?和弥くんは〜?一緒に帰らないの?」
「今日は友達と遊ぶんだって言ってたから大丈夫♪」
「…はぁ…あんた嫌われてるんじゃないの?」
「私達にとってこれが普通なのっ!」
「そうかな〜…まっいいけど!じゃあ帰りますか!」
「うん♪」
そう言って、私と沙恵はまるで恋人同士の様に、二人で手をつないで帰った。
***************
「恋奈〜早くお風呂入りなさ〜い!!!」
「…………」
「恋奈〜???」
私は家に帰ると同時に、部屋にこもりきっていた。
何をしているかというと…
「う〜〜〜〜…」
携帯とにらめっこ。ずっと考えていた。
元カレに、返信をするかどうか…。
私は作成画面を閉じ、元カレから送られてきたメールを見る。
本文
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元気にしてるか?
お前と別れて3年経ったな。
恋奈にとっては短い3年間だったかもしれねぇけど
俺にとっちゃ結構長い3年間だったよ。
俺からフったくせにこんなこと言う資格ないか。
あんときはごめんな。
お前は俺と過ごしてた時間なんて、とっくに忘れてしまったと思う。
本当に、ごめん。
恋奈がよければなんだけど
俺と会ってくれねぇか?話がしたいんだ。
返事、待ってる。
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