―バレンタインデー前日―
「…よし、あとは冷蔵庫に入れて冷やすだけっ!!」
あたしはチョコ作りに燃えていた。
考えてみれば、手作りチョコを好きな人に渡すなんて初めてだった。
「博樹に早く食べてほしいなあ〜」
チョコが入っている冷蔵庫に話しかける。
「あたしね、今までこんなに人を好きになった事なかったんだあ」
冷蔵庫は、返事をしない。
「だから、頑張ってみるよ!博樹に告白する!!冷蔵庫、あんたも応援しなさいよ!!」
冷蔵庫は、やっぱり返事をしなかった。
「そういえばっ!」
明日は博樹になんて言って渡せばいいのかな?
『好きです』
『付き合って』
ん〜…シンプルすぎ?
…悩みに悩んだ結果、普通に「好きです、付き合ってください」と言う事に決めた。
夜中に布団の中で告白の言葉を練習し、もし博樹があたしを好きで、付き合ったら…
と、妄想していたらいつの間にか眠りについていた。
ねぇ博樹、チョコ、頑張ってつくったからね。
*********
いつもより早起きして、昨日冷やしておいたチョコを博樹が好きな青の包装紙でラッピングした。
時間が過ぎていくたび、鼓動は早々と音をたてる。
「好きです!付き合って下さい!」
最後の練習と共に、慣れないメイクを少しして、学校に向かった。
いつもはあまり気にしない寝癖。
いつもはすっぴんの顔。
だけど今日はあたしにとって特別な日、だから…
博樹、いつもと違うあたしを見つけてね?
―ガラッ
「あれぇ?瑞希、今日早いじゃん」
「あ、うん…」
楓に返事をしながら博樹を捜した。
博樹はまだ来ていなかった。
「あ、瑞希ちょっとメイクしてる!」
「え?あ…変かなぁ?」
「超可愛いよ!」
可愛いなんて、お世辞とわかっていても今日は嬉しい。
楓のおかげで少し緊張がほぐれてきたとき、教室のドアが開いた。
博樹だった。
あたしは急いで鞄の中からチョコを取り出して、博樹に渡そうとした。
「あ、ひろ…」
「ひ〜ろきっ!!」
「おっす、チョコか?」
あたしの声は甲高い楓の声に消されてしまった。
「一応、手作りだから」
そう言った楓の手にのっていたのは、ピンクの包装紙につつまれたチョコだった。
「サンキュ」
博樹は少し照れたように笑って、それを受け取っていた。
そんな恋人同士みたいな二人を、あたしは黙って見ていることしかできなかった。
…ピンクのにすればよかった。
そう呟いた。
「なぁ、これ義理だよな?」
「え?」
楓と博樹のやりとりを聞いていられなくなって、あたしは自分の席に戻ろうとした。
そのとき、博樹の低い声が聞こえた。
「…楓の本命、欲しいんですけど?」
ああ、ああ、ああ。
そうか、博樹は楓を好きなんだ。
あたしは、自分の作ったチョコを強く握り締めた。
バカか、あたしは。
わかっていたはず、あたしには無理だってこと。
楓みたいに可愛い子じゃないと、駄目だってこと。
わかってた。
なのにあたしは期待して博樹の笑顔、待っていたの。
ずっと、待ってたの
「…バカみたい」
あたしは、教室を飛び出て、誰もいない理科室に向かった。
静かに、時間は過ぎていく。
「はは、最悪」
あたしの頬に冷たいものが流れた。
ふいてもふいても、それは止まらなかった。
きみがすき
そう思う度、胸が痛むよ。
あたしはチョコの包装紙を綺麗にはがして、一口食べた。
ほろ苦い美味しさが口の中に広がる。
「…おいし…」
―ガラッ
「福山!こんなとこに!!」
ハゲ散らかした担任があたしに指差してそう言った。
「悪いですか、悪いですか!もうあたしは人生に疲れたのです!!」
「チョコじゃないですか」
ハゲは、あたしの前にしゃがんでチョコを一つ、つまんで食べた。
「勝手に人のチョコ…」
「美味しいです」
ハゲは、あたしに笑ってみせた。
あたしは、泣いた。
泣いて、泣いて、泣きまくった。
ハゲはあたしが泣き止むまでここにいてもいいと、理科室の鍵を渡してくれた。
寒い理科室の中で、すすり泣く自分の声だけが響いた。
頑張って作ったチョコを自分で食べた。
少し、しょっぱい味がした。
あたしは「よしっ」と気合を入れて、腫れた目をこすりながら理科室を出て、鍵を閉める。
それに、博樹の名字、水島だから、結婚したら水島瑞希ってみずみずしくなるじゃん、と心の中で少し笑って理科室のゴミ箱にふと目を向けた。
理科室のゴミ箱には、青の包装紙が捨てられている。
あたしは小走りで職員室へ鍵を返そうと向かった。
気分はなぜかすっきりしていた。
きっと、ハゲが優しい(ちょっとキモい)笑顔を見せてくれたからだと思う。
鍵を返したあたしは下を向いて、少し笑った。
…あたし、もう一度頑張れる気がする…
前を向いて、あたしは走った。
あなたの元へ。
―今は休み時間。
博樹はどこにいる?
あたしは荒々しく教室のドアを開けた。
博樹はいない。
「だっ誰か…博樹知らない!?」
「水島?あいつなら呼び出しくらってっから相談室いると思うけど」
「わかった!!ありがとっ!!」
あたしは相談室へ走った。
相談室の前に来ると、ちょうど博樹が出てきた。
「おお瑞希!どした?」
「博樹…あ、あたしね」
きみを好きになって、いっぱいいっぱい悲しみました。
時には涙をながし、目が腫れたこともありました。
時には泣き崩れ、諦めかけたこともありました。
だけどその分、いっぱいいっぱい幸せになりました。
時には笑い、楓にうっとうしがられました。
時には涙をながし、きみをすきでよかったと思いました。
恋することを、教えてくれたきみに
伝えたい事があるの
「あたし、博樹が好き」
きみが、すき。
fin...
―あとがき―
みなさんどうでしたか?渡の初小説(笑)
渡はこうして小説をちゃんと書いたのはこのお話が初めてなのです。
頑張って書いたんですけど、なかなかうまくいきませんね(汗)
もっと上手に表現したかった所とかもあったんですけどねえ〜
まあ、書いていくうちに上手になるでしょう☆
それまで皆さんあたたかく見守っててくださいな!!
渡でした♪
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