ねぇ、あたしたち



なにがあっても



一緒よね?






愛とよだれと優しさと







高校2年目最後の冬だった。


ちらちら雪が見られるあの日、あたし、秋山佳穂は好きな人の好きな人になった。


あれから、一ヶ月…



「かーほっ!帰るぞ!」

「ちょっと待ってよ竜哉ぁ!」



あたしは大好きな原竜哉とバカップルしちゃっています。


あたしと竜哉は、家が近いっていうのもあって毎日一緒に帰っている。

寒い日も、暖かい日も、必ず手をつないで。



いつものように2人で帰っていると、竜哉が言った。


「あー、明日テスト嫌だああ」

「あたしも嫌だよぉ…」

「…そうだ、テストの点勝負しねぇ!?」


竜哉は目を光らせる。


「勝ったらメシ奢りで!!」

「え〜…」

「はい、決定!」


仕方ないなぁ、とあたしはその勝負を受けることにした。

後々、大変な事が起きるとも知らずに―――…








********************



その夜、あたしは徹夜で勉強した。

元々負けず嫌いな性格があたしをそうさせたのかもしれない。


自分の頭の悪さを改めて思い知ったものの、テストには結構自信がある程度までのぼりつめた。


よく考えてみれば、これが2年生最後のテスト。

精一杯頑張って、勝負に勝つぞー!と気合いを入れてあたしは学校へと向かう。



単語帳をペラペラめくりながら歩いていると、睡魔があたしを襲った。


ああ、くそ、眠い。


何度も何度も欠伸を繰り返し、それでも負けんとばかりに時間を有効に使う。


……そうもしていると、あっという間に学校についた。


教室に入り、席に座って今度は教科書を開く。



「かほ、おはよ!何、勉強してんの?」

「竜哉!もう、邪魔しないでよね」



ごめんごめん、と言いながらあたしの斜め後ろの席に鞄を置く竜哉。


何をしていてもあたしの彼氏はやっぱり格好いい。


竜哉に会うと、眠い事なんて忘れちゃったよ。



「はいはい、席につきなさーい」



担任の声にあわせて、クラスの人たちが一斉に席につく。


先生がごちゃごちゃ話す言葉が、あたしにとっては子守唄のようにさえ感じられた。


眠い、眠い、眠い。

とにかく、眠い。


何度も寝かけ、危ない状況に陥っていると、チャイムがなった。

急いで教科書を片付けると、竜哉と目があった。

あたしは軽く笑顔を見せて、前から配られてくる問題用紙を後ろに渡す。


絶対いい点取るぞっっ!!!





担任の「はじめ」の合図で問題用紙をめくる。


うはっ、眠い。


半分眠りながら問題をといていく。


ああ、頭が回らない。


徹夜で勉強した意味がまったくなかった。

あたしは必死で目を開く。

それでもまぶたは重く、頭は回らない。




いつのまにか、浅い眠りについてしまった。




―ポタッ




液体が紙の上に落ちる音がかすかに聞こえ、あたしのまぶたを開かせた。



なに、え?



問題用紙に、濡れた後がある。



まさか、


まさか、



あたし…




右手を口に当てた。






まさかが的中






たらしてしまった。よだれ。





…あたしは竜哉に見られていなかったかが心配になった。



ちょっと待って、斜め後ろとか、超見える場所じゃん!

でもテスト中だし…見てるわけないよね。

よだれたらす彼女って、嫌…だよね。



あたし、竜哉に嫌われちゃうのかな…



まだ見られたって決まってない、と自分を励ますように何度も心の中で叫んだ。



嫌、嫌、嫌。

竜哉に嫌われるのは、絶対嫌。



テストのことなんか忘れて、あたしは妄想しだした。



―もし、竜哉があたしのよだれたらりん♪シーンを見ていたら…




「よだれたれる女なんかキショいっつーの!!」

「待って、竜哉、あたしの話聞いて!!」

「誰が待つかよ。このよだれ女!!」

「竜哉…っ」

「よーだーれっ!よーだーれっ!」




いやああああああああああああああ!!!




もうあたし、生きていけない!お嫁にもいけない!


このまま…死んでしまいたい…


あたしはテストの残り時間も、ずっとよだれのことで頭がいっぱいだった。



その日はずっと、よだれと竜哉のことを考えていた。



もちろんテストの出来は悪く、徹夜はよだれをたらしただけ、という事になってしまった。


こんなことになるんだったら、徹夜なんてしなければよかったと心の中で叫ぶ。


竜哉がよだれたらりん♪シーンを見ていませんように…




「かーほっ!帰ろっ」

「竜哉…」



あれ、竜哉意外と普通じゃん。見られてなかったのね、と少し安心する。



「ほら早く!」

「うん!!」



笑顔で竜哉に返事して、竜哉の隣で歩いた。