こんなに綺麗なもの
この薄汚い世の中にも
まだあったなんて
俺は…
ある人が描いた綺麗な一瞬
「俺は!!!感動した!!!」
「お前は小泉○一郎か」
「だってマジで感動したんだって!お前も見てみろ!絶対に感動するから!!」
「お前の言うことは…信じられない…」
「なんでそこで悲劇のヒロイン演じてんだよ。ほらっちょっと見てみろって」
そう言って俺は、友達の啓祐(けいすけ)の体をむりやり反対方向に向け、彼の腕を掴むとダッシュである場所へと向かう。
…俺はごく普通の高校生。
成績はちょうど真ん中。
部活も入っておらず、特技もなんにもない。
そんな、本当に普通の男、西岡 純一(にしおかじゅんいち)。
そんな俺が、小泉○一郎の様に感動した日は、いつもと変らない日だった。
いつものように授業を終え、自転車で帰り道を走っていた。
「あー寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い〜〜〜〜〜!」
叫びながらバカみたいに坂道を下ってゆく俺。
でも叫んだからといって、寒さが納まることはなく…
はぁとため息をつき、そこら辺に自転車をとめて、なんとなく近くにあった公園のベンチに腰をかけた。
―――そこで、俺は感動した。
***************
「こっちこっち!!!」
「も〜めんどくせぇな〜」
「ほら!あれだよ」
俺はあれ。といって彼に教えた。
「…絵?」
「すごくね?」
今どき、外で絵を描いてる人なんているなんて思ってもみなかったから最初は興味本位だった。
帽子を被って、マフラーを巻いて、片方の手にはパレットを持って、もう片方の手には筆が握られていた。
男か女かもわからなかった。
でも、そんなことはどうでもよかった。
それより、絵がとても綺麗だったから。
「お前これに感動したんだ。へぇ〜よく見つけたなぁ〜!!!」
「うっわ!ちょいお前!勝手に触ってんじゃねぇよ!!」
啓祐が絵の主がいないことをいいことに、絵を台から持ち上げ、まじまじと絵を見る。
「……………へぇ〜…俺、結構こういうの好きだなぁ〜。」
そう言って、彼は絵を元にあった場所に置き、なぜか意味ありげな笑みを浮かべ、俺を見る。
「なっなんだよ…その顔は……」
「ん〜?なんでもないさっ!自分で考えろ!!」
「はぁ?!なんでだよ!教えろよ!!」
「あはははっ!!」
そうやってじゃれあっていると、突然後ろから声がした。
「あっあの…」
俺たちは少し緊張しながら後ろに体を向けた。
そこには、帽子を被って
マフラーをまいた女の子がいた。
「あっすみません!勝手に見てしまって!!!」
俺は謝ってその場から立ち去ろうとしたが、
「あっちょっと聞きたいんだけど」
と、啓祐が彼女に話しかけてしまったため、帰ることはできなかった。
「あのさ…」
啓祐は彼女の耳元で何かを話していた。
すると、彼女の顔は真っ赤になって
「……当たりでしょ?」
啓祐は彼女から離れるとそう言った。
彼女は顔を真っ赤にするだけで、何も答えなかった。
でも、俺たちが帰ろうとすると、彼女は小さな声で言った。
「きっ………綺麗…だったから……だから…かいたの…」
俺には彼女が言っていることが理解できなかったが、啓祐は「ありがとう」と言っていた。
何て言ったんだよ?
啓祐にそう言っても、彼は秘密。と言って何も教えてくれなかった。
答えは見たらわかる!!
そう言って彼は自分の家に帰って行った。
「何をだよ…」
でも、次の日。
学校からの帰り道にこのまえのようになんとなくあの公園に行った。
そこには昨日の彼女の姿はなかったが、絵は置いてあった。
「あっ…絵、完成したんだ…」
俺は絵を見た。
そして、やっと俺は気づいた。
その絵には
綺麗な夕日を背景に
一人の男がダッシュで自転車をこいで
坂道を下ってゆく姿が、かかれていた。
fin...
©December.23th.Sun.minato reika.
